独り言 3
しぜん学校は何をするところなの?と人に聞かれるといつも返答に困ります。それは「決まった活動」が無いからだと思うのですが、どうにも分かりにくいことは良いことではないですよね。ですので、今回は活動を掻い摘んで振り返ります。ちょっとだけエピソードを紹介させてもらいますが、詳しくはスタッフの書いてくれている各組のブログをご覧ください。他の組の活動も面白いですよ。
しぜん学校は、「深山組」「里組」「自然組」の3つの組に分かれています。高学年が多い「深山組」と「里組」。名前の通り活動のフィールドは山と里。低学年の多い「自然組」はしぜん学校の拠点で森で遊ぶことが多いのです。ちなみにしぜん学校のしぜんがひらがな表記なのは、ネイチャーの自然(自然の中で学ぶ)とナチュラルの自然(自然体でいられる場所)とを考えているからです。
自然組
「私たちはずっと自然組でいようね。」と話していたのは、3年生のゆいかとうたよとれんたろう。夏のキャンプでお祭りをしている時のことでした。その日はあいにくの雨。天候には恵まれなかったのですが、ずっと楽しみにしていたようで、お家で自分達のお店の準備をしてから当日宿泊場所の山荘でも、机や椅子を並べて大きな声で「いらっしゃいませー!」とお客さんを呼び込んでいました。「こんなことして遊べるのは自然組だけだもん。」とその子達は言っていました。そうです。自然組で大事にしているのは自然の中での創造的な遊びです。その子達のインスピレーションでその日の遊びが次の活動へとつながっていきます。つまり全く予定が組めないというデメリットがあるわけです。笑
4月には予想もしていなかった活動をしていくことになるのですが、僕はそれがとても好きです。子ども達が活動を作っていけるそんな場所が他にあるでしょうか?しぜん学校は子ども達が大人に守られながら自由に遊べる場所であってほしいと思います。ですが、習うことに慣れている子にとっては、自由に遊ぶことはとても難しいことです。そして、何が育っているのか理解するのは大人にとっても難しいことです。というのは、何かが数字で表されるようにわかりやすく育っているわけではないからです。「今日はこれをしましょうね。」「できた!」というやりとりがあれば、「何をした」という外延的なことがわかりやすいですよね。ですが、しぜん学校で大事にしているのは内包的な「その子にとってどのような価値があるのか?」というような、その遊びの中で培った感覚です。「ずっと自然組でいようね。」の言葉の中には、お祭りをして楽しかったことだけではなく、それまでの準備や友達と心を通わせて協力できたこと、他の組にはない自分達の遊びに対する誇りまで含まれているように思います。
里組
きっかけは、やはり子ども達から「塩が作りたい」と声があがったことだと思います。それまではどこかやらなきゃいけないという気持ちが畑仕事という言葉に現れていた気がします。どうすればもっと畑で遊ぶ感覚で子ども達が野菜を育てられるかな?とスタッフとずっと悩みながら活動をしていました。その年の子達は料理が大好きで、里組が大好きでした。
初めは海水を僕が汲んできて、それをしぜん学校で塩にしました。そこで取れたにがりを使って豆腐を作り食べました。塩は食の中心で食は生活の中心です。生活を作っていけることは子ども達に自信をくれました。
今年は3回目の塩作り。間違いなく里組で1番人気なのは塩キャンプでしょう。夜遅くまで火の番をしながら、海岸でキャンプをします。作った塩で味噌や梅干し等日持ちのする食べ物を作ります。今年は味噌に使う大豆も畑で育てました。そんな思い入れの強いキャンプを途中で帰ったのがそうまです。友達と買い物に行く約束をしていたそうで、2日目の朝にお母さんに迎えにきてもらい、みんなにホットケーキを残して帰ります。紀伊長島まで迎えにきてくれるお母さんも凄いのですが、写真のホットケーキまで前日に仕込んでキャンプに臨むその気持ちが素晴らしいです。もちろん他の子達も色々持ってきてました。夜食のカップラーメンだのおやつのべっこう飴だの主体的なんて言葉では表現できない、子ども達の気持ちがあります。里組魂のような誇りを受け継いでいるんです。つくっているものは塩だけではありません。
深山組
「もう絶対帰る。みんなにはごめんって謝りに行く。」とキャンプの朝に泣きながらあさひが車から降りました。それほど前回のキャンプがキツかったんですね。独り言2の写真はそのキツかったキャンプの写真です。約18キロの行程を歩きました。藤原岳の山頂に登り小雨の降る中、竜ヶ岳まで縦走しました。大人でも厳しい行程を歩き切りました。泣きながら訴えていたのは、その次のキャンプの朝でした。キャンプ地に着くまでずっと気持ちは変わりませんでした。途中泣きながら立ち止まって怒っていると、他の子達がなんとかなだめます。子どもの主体性を大事にとか何とか言ってお休みするのは簡単ですが、ここぞという時にはやらなきゃいけないのが男です。3時間歩いてキャンプ地に着き「ここまで来たなら帰っても誰も文句は言わないよ。どうする?」と聞くと「ここで泊まる」と照れながら嬉しそうに答えました。いっぱい泣いちゃったという気持ちと、そんなにキツく感じなかったのは自分の力が大きかったから。そんな力を自分が持っていたのが嬉しかったのでしょう。そりゃその日の夜に食べたシチューは最高に美味しかったですよ。
自分の力は測れるものではありませんが、3年生が3時間10キロの荷物を担いで歩いてもまだ余裕がありました。そんなに自信のあるタイプではないから、朝には帰ると言っていましたが、歩き切った事実は絶対覆るものではありません。自信がない彼に「あなたは3時間10キロの荷物を担いで歩けるか?」と聞けば、「歩けるよ。」と自信を持って言うでしょう。歩いたのだから。「シチューは山で食べるのが一番美味い」とか言っちゃうかもしれないですね。経験するってそういうことですから。
しぜん学校は何をするところなの?と聞かれたら何と答えたらいいでしょう?
やっぱり何と答えたらいいのか難しいです。笑