合同キャンプ番外編「ぼくはおかあさんに今すぐ会いたいんだ」
にぎやかに夕食がすみ、それぞれが自分の食器を洗ったり片付けたりし始めた頃。陽は少し前に沈み、薄暗くなりかけてきました。もうしっかりとヘッドライトをつけている子も。さすがー、なんて思いながら、私も食器洗いに行こうかな、と立ち上がりかけたとき、あっくんがやってきました。一年生です。
「あのね」
「なあにー?」
目があった瞬間、
「ぼく、お母さんに会いたくなっちゃった」
ぽたぽたぽたぽたと涙。
よしよし、おいで、と膝にのせ、そうかそうか、と抱っこしました。
わーん、わーんとあっくんは泣きました。
「ぼく、今すぐお母さんに会いたい。今すぐ会いたいんだー。わーん」
そーって寄って来て、隣のベンチに座って、ぎゅと口を閉じて、うつむく子も、2人。このまま、もしかすると涙の大合唱になる、かも、なあ…。うんうん、会いたいよね。
泣いてるあっくんを見て、春貴がどうしたの? とやってきました。
「お母さんに会いたくなっちゃったんだって」と言うと、「あー、それね」と春貴。
「ぼくもそう思うからわかる。ま、でも、明日になれば会えるからさ! ね?」
そうなのかー。へっちゃらそうに見える3年生の君の中にもそんな気持ちがあるんだね。
次はすぐる。「ぼくもわかるー」。すぐるはそう言うとあっという間に向こうのあそびの輪に走っていきました。
次はめいなちゃん。「みんなそうだよ、あっくん! 明日にはお迎えに来てくれるから、元気出して」
楽しそうな君たちの中にも、そんな気持ちがあるんだね。ことばにしてくれてありがとう。
ひとしきり泣いた頃、永慈先生があっくんに声をかけました。
「あっくん。泣いてもお母さんには会えないよ。だってお母さん、おうちにいるんだもん。泣いても聞こえないよ。明日迎えに来たら会える。あっくんは、会えないってわかってるから、悲しくて泣いてるんだよね」
うん、とうなづくあっくん。
それからもうひと泣きして、あっくんはぴたっと泣きやみ、自分から私の膝を滑り降り、「ぼく、もう寝る準備する。寝たら早く明日になるから」。
あんまり気持ちよい空気だったので、テントではなく、星空の下にマットを敷いて六人で寝ることにしました。
そしてあっくんは、もう泣きませんでした。
とても美しい満月の夜でした。月が左手から登り、少しずつ右へ右へと進んでいくのを寝袋に入ってみんなで見ながら、きれいだね、きれいだねと何度も言っているうちに、1人また1人と寝落ちで行きました。もちろんあっくんも。
あっくん、明日が楽しみだね
また明日。おやすみ。